2013年2月27日水曜日

指・手首・腕

 では、実際にスティックで叩いてみるお話に移ります。練習台でも楽器でも構いません。
良いドラマーはスティックを漫然と握って振り下ろしているわけではなく、体の様々な部分を駆使し、出したい音に基いて体の使用部位を使い分けています

 今回はまず腕全体に焦点を当ててみます。

 まずは手首




一番最初にここを意識しましょう。恐らく一番たくさん使う部分です。手首を使う事に慣れていない方は、動画のように前腕を固定した練習法があります。ここで、手首の動きだけでスティックがどこまで上がるのかを意識する事が重要です。

 次に、




 腕の動きに注目していただけるよう、あえて手首を使わない動画にしました。前腕のみで叩く→上腕のみで叩く→前腕・上腕の両方を使う、という3パターンをやってみました。ここでも、スティックがどこまで上がるかを意識しましょう。

 最後に、



フィンガー・コントロールというドラム用語があります。一般的に非常に細かいニュアンスをつける時や、一番速く叩く時にはたくさん指を使います。ただし、スティックの可動範囲を広げる目的、握りの強弱をコントロールする目的としても使うので、私はほぼ全てのショットで指を少しずつ使っています。これは必要になった時に専用の練習を始めればよいと思うので、まずは意識するだけで構いません。ここでも、スティックの可動範囲に注目しましょう。

 腕に関して、叩く時に使えるのは以上3つの部分です。では、スティックがどこまで動かせるか(上がるか)に注目しながら、順番に足していきましょう。


 私の考えとしては、

           常に指・手首・腕の全てを使う意識でいる。ただし、出したい音によってどの部分を大きく使うかが変わる

というものです。ドラマーの皆さん、あなたの手首・指・前腕・上腕は全て使えていますか?使っていない部分を意識して使い始める事で、使える音やリズムがどんどん増えていきます。次回は、実際のドラムセットでそれぞれ実演してみます。

2013年2月26日火曜日

自分の演奏を録画する

ドラムはアクションの大きな楽器であり、叩くフォームと音とが密接な関係にあります。フォームがぎくしゃくしていると音やリズムも必ず影響されます。
そこで、自分の演奏を録画して、右腕・左腕・右足・左足、それから姿勢と、一つ一つ力んでいたり等不自然なものがないかチェックする事で、フォームを自己診断できます。
これは経験上ですが、フォームを客観的にチェックしないままドラムを叩き続けると、非効率で不自然な奏法が身についてしまう危険性があります。長年の癖ほど治りにくいものなので、できるだけ早いうちに録画を習慣にする事をお勧めします。
何も高性能のデジカメを用意する必要はありません。もしスマートフォンをお持ちならそれで十分です。
また、スマートフォン・デジカメなら録画時の音質にも優れており、前回ブログで録音を勧めましたが、動画で撮ってしまえば録音の必要もありません。動画なら、演奏が崩れるポイントをフォーム面からチェックする事ができます。
自分の演奏を検証するのは、自分の歌を聴く事のように、最初は少し恥ずかしく抵抗があるかもしれませんが、時には厳しく時には褒める事も忘れずに、ドラマーになった自分と楽しく向き合う事が、成長につながっていきます。

2013年2月23日土曜日

自分の演奏を録音する

 小さなライブハウスへライブを見に行くと、演奏者が小型の録音機で自分たちの演奏を録音しているのを見かけた事はありませんか?経験上、かなり多くの共演者が録音している現場に立会います。
 
 自分の演奏を録音して後で聴きなおすメリットはいくつかありますが、一番の目的は自分の弱点を意識するためです。
 レッスンで講師に指摘されたり演奏の現場で共演者に言われたりするポイントは、たいていは自覚がないままやっている事です。その瞬間の自分の演奏を客観的に聴くと、当たり前ですが第三者の視点を持てるので、聴いた人がなぜそんな指摘をしたのかを理解して納得する手助けになります。たまに何度聴いてもその指摘が納得できないケースもありますが、そこまでつきつめて自分の演奏に向き合う事自体が重要です。

それだけでなく、自分で自分の弱点に気づく事もできます。「これをやるとタイミングが遅れるな」とか「聴いてると拍がわからなくなるな」など、練習するネタの発見に繋がります。なかなか酷な作業ですが、自分の録音と憧れのドラマーとの演奏を本気で聴き比べてみるとよいでしょう。自分に何が足りないのか一目両全です。

これはオマケの話ですが、録音を聴いてモチベーションが上がる事もあります。習得した技が「できるようになった」事を録音で味わって、たまには自分を褒めてあげましょう。それは自信に繋がり、ドラムを続ける上で必要な事です。人を楽しませるためには、人前でドラムに向かった時はいつでも自信に満ちて自分も楽しめるメンタルが必要不可欠です。人を楽しませられる余裕のあるドラマーになる事を目標の一つにしましょう。

2013年2月21日木曜日

練習台とメトロノームを買いに

 やはり楽器屋さんで買えますが、スティック同様、何種類もあってどうしよう…となります。

 まず練習台。色々な材質のものがあり、それぞれスティックの跳ね返り方が違います。メーカーというより、材質別にご説明します。

 ・硬質ゴムパッド…楽器屋さんで最も多く見かける練習台。スティックの跳ね返りが極めて強いです。跳ね返りをあまりに抑えてしまうと手を痛める危険もあるので、ヒットした瞬間に跳ね返りを逃がす練習の仕方を意識した方がよいです。ちなみに跳ね返りの事を「リバウンド」といいます。そういう意味では、硬質ゴムはリバウンドを最大限に利用するための練習に一番適しています。ハイハットシンバルの閉じた状態のリバウンドに近いですね。

 ・ジェルパッド…叩くパーツの下にジェルが入っていて衝撃を吸収、硬質ゴムに比べてかなりリバウンドが抑えられます。おそらく商品は特定メーカーの一種類だけで、青い色で興味をそそられますが、個人的には実際のドラムの皮のリバウンドよりもかなり跳ね返らない印象です。

 ・メッシュタイプこれが一番実際のドラムの皮に近い感触、リバウンドです。実は私はこれを自宅用、ツアー用に使っています。写真のように、目の細かい網戸のような材質です。


 上のものは網だけ買って、使用していないスネアに付けた自宅用、下のものはツアー携帯用の小型のものです。
 ご覧のように、ドラム同様にリム(端の金属部分)があり、小型用は角度によってはリムに当たってしまうので、できれば胴もスタンドも付属の大きいサイズのものがお勧めです(7500円位)。小さい方はもともと太ももにセッティングして使用するもので、あくまで携帯用だそうです。

 以上が主な練習台の種類で、他にも何種類かあります。こちらもスティック同様売り場で叩き比べてみましょう。

 先に申し上げておくと、練習台はあくまで練習台であるということを意識して使いましょう。例えばメッシュタイプはかなり音量が出ない仕様になっているので、音量の大小と音色は実際のドラムのをしっかりイメージしつつ、タイミングとスティックの軌道をチェックする事に主眼を置く必要があります。練習台は基礎練習用で、あとは定期的にスタジオでの個人練習とレッスンで楽器に触れる機会を作りましょう。

 長くなりましたが、練習台の話はここまで。以下メトロノームについてです。

 ちなみに私はこちらを使っています。

一番安い電子メトロノームで、超ミニイヤフォンジャック付きです。
 何が良いかというとまず音がシンプルな電子音であること。メトロノームの音自体が短いので、タイミングがわかりやすいです。
 機能はいたってシンプル。4分音符・8分音符・3連符・16分音符のみ鳴らせます。メトロノームは正確なタイムを刻んでくれればよいので、これ以上の機能は必要ないかと個人的には思います。

 もっと高価な、よりバリエーションに富んだ練習パターンを提示してくれるものもありますが、当レッスンでは練習パターンを自分で編み出していく方法を採りたいので、あまり高価なものはお勧めしません。





 


2013年2月20日水曜日

ドラム…買わないといけませんか?

 欲しくなるまで買わなくても大丈夫です。

 先ほどの記事で申し上げた通り、レッスンにはスティックが必要なだけですし、自宅練習用には一般的に練習台がよく使われます。
 そもそも大きな音が出るドラムセットを普通に鳴らせる環境とは、防音のきいた地下室があるか、郊外の広い庭付き一軒家にお住まいか…日本だとそのぐらいです。住宅街であれば練習台かエレドラ(電子ドラム)が限界です。中にはタオルやガムテープで限界まで防音してドラムセットを置いている方もいますが、それなら練習台でいいような気もします。

 ドラムを始めてバンドに誘われた場合でも、ロック系のライブハウスにはほぼ100%ドラムセットがフルにあります。ジャズ系のお店の場合に限り、たまにパーツもしくはセット自体が無い事があるので、その場合は楽器を持っていない旨を企画者に伝える必要があります。このあたり、ライブ実践についてはまた後日お話します。

 楽器に触れたくなったら、民間スタジオの個人練習を利用するとよいでしょう。当日予約なら1時間500円前後で利用できるスタジオもあります。

 ドラムを始めてしばらくすると、必ず自分の楽器が欲しくなるものです。そうなったらまずスネア→ペダル→シンバルというように揃えていき、決心してフルセット購入…という道のりが一般的かと思われます。

 まず買うのはスティックと練習台、メトロノームくらいです。それでどなたでもドラムは始められます。

スティックの選び方

 楽器屋さんのスティック売り場には沢山の種類があります。ドラムを始めるのはいいけど、一番最初に買う道具選びでまず迷う事になってしまいます。

 ドラムを始める方に私がまずお勧めしたいのは、軽くて細いスティックです。

 なぜなら、軽いとコントロールがし易く初心者の方向きだからです。太いのはたいがい重量があり、重いスティックはタイミングとボリュームをコントロールするのにある程度技術が必要です。例外として、大音量のロックバンドへの参加が決まっている方などは、最初から重いもので挑戦してみるのもよいでしょう。ただし、力んだ状態で太いスティックを扱うのは腕の故障の原因になるので、レッスンを受けて頂くなら早い段階で脱力についてお話しします。

 「細いスティックを買ったのになんだか重い!」というケースもあります。
 スティックはオーク(樫)製・ヒッコリー(くるみ)製・メイプル(楓)製・アオダモ製などと商品によって原料が違うので、細くても重い木でできている可能性があります。
 買ってしまってから見た目と重さのギャップに悩まないために、その場で少しでも手にとって試奏することをお勧めします。
 スティック売り場にはゴム製の練習台が必ず備えてあるので、良さそうなスティックを何組か試しに叩いてみて、一番しっくりきた製品を選びます。「しっくりくる」の基準は「叩く時にストレスを感じず、コントロールしやすそう。楽に叩ける。」としておけば間違いありません。

 買いたいスティックの種類が決まったら、次に左右のバランスを揃える事が重要です。同じ製品でも個体差がある場合があり、売り場に「はかり」がある店舗なら一本ずつ重量を測ることもできます。私が以前使っていたVic Firth社の”Peter Erskine Ride Stick”は、なんと一本あたり最大10gも違いました。

 ドラムを叩くモチベーションを上げる意味で、自分の好きなドラマーのシグネイチャー・モデルを買ってみるのもよいでしょう。有名ドラマーのモデルは比較的個性的ですが、たまたましっくりくることもあります。自分の好きなドラマーのモデルがあまりにもピッタリきた、という事が経験上何度もありました。この場合ももちろん試奏は欠かせませんが。

 これだけ慎重に選んでも、いざ買って使ってみるとしっくりこない場合があります。また、最初にしっくりきていたものがだんだん合わなくなってくる事もあります。
 
 スティックというのは、あくまで手の大きさ、指の長さ、奏法、使用目的、使用楽器とセットで機能するものなので、奏法が変わったり演奏する音楽の種類が変わったりすると当然使用スティックはどんどん変わるはずです。
 その場合はまた買いに行きましょう。いろんなスティックを選び、買い、試行錯誤する事が経験として必ず積み上がっていきます。それは現在の自分の奏法、出したい音と向き合う事でもあるからです。

 

2013年2月19日火曜日

レッスンに何を持っていけばいい?

まず初回レッスンに用意して頂くものは

スティック
ノート できれば五線譜ノート
筆記用具

で結構です。

スティックは楽器屋さんで各自購入頂きます。

楽器屋といっても様々で、管楽器、弦楽器、ギターそれぞれ専門店になってしまうとドラム関連商品は売っていません。渋谷や新宿にあるイシバシ楽器、KEY、新星堂Rock innなど大型店は、在庫も多く入りやすく、お勧めです。五線譜ノートも楽譜コーナーにあると思います。
また、都内にはいくつかドラム専門店もあります。マニアックな商品やオーダーメイド、リペア等、いずれお世話になる事になるでしょう。もちろんスティックもあります。

スティックとノートがあれば、あとはスタジオにドラムセットが完備してありますので、そちらを使用します。

では次の記事でスティックの選び方をお話します。

2013年2月17日日曜日

ドラムって疲れませんか?

正しい奏法を身につければ、疲れません。

そもそも橋本は、中学1年の時運動部でしたが体力的についていけなくなり、吹奏楽部に入ってドラムを始め、結局今まで自分の意志で続けています。

大音量を出そうとする時に、一見腕力が必要なように見えますが、大音量を出す為に必要なのは

重さ+スピード

であるので、小柄で細身の方でも、スムーズなスティックの軌道と徹底した脱力、スティックの重さと体重をうまく乗せる技術で十分大音量が出せます。体重を乗せる技術とは、腕だけでなく全身をうまく使う技術です。

長時間、大音量で演奏する場合でも、スティックをスムーズに動かせて脱力できていれば、かなり体力の消耗を抑えられます。

一見、いかにサボるかを述べているようにも見えますが、これは
・楽器を最大限に鳴らす
・きれいで耳に優しい音を出す
・抜けの良いクリアな音を出す
技術でもあります。

むしろ、マイクやPAが無いなど小さな音で叩かないといけない場合に、スティックコントロールに神経を使って疲れる事がありますが、これは普段から練習で体に染み込ませれば大丈夫です。

あと、正確なタイムで演奏しようとしてコントロールに疲れる場合もありますが、これも日常的にメトロノームで練習していれば、本番では疲れることなく、面白いくらい正確に演奏できます。

体力的に疲れないための練習は、タイミングと音色を良くする練習に直結しています。逆に言えば、練習で身につけた技術次第で体力的に疲れ知らずのドラマーになれます。

ライブ演奏で疲れるのはむしろ脳。これはまた後日お話しします。

2013年2月16日土曜日

ドラムって手足がバラバラに動いて難しそう

 とよく言われますが、皆さん普通免許持っていらっしゃいますか?

 車の運転、マニュアル車だとクラッチを切りながらアクセルを踏みながらシフトレバーを操作しますよね。オートマにしてもアクセル踏みながらハンドルを切りながらウインカーを出したりしますよね。

 つねづね、ドラムも一緒だと思っています。手と足はシステマチックに連動している場合がほとんどで、よりバラバラに見える複雑なプレイは、単に複雑なコンビネーションであるというだけで、シンプルにすると「一緒に叩くか交互に叩くか」だけであります。決してバラバラで無関係ではなく、お互い関係のある動きなので、暴論を言ってしまえば

 「車の免許を持っている、もしくは今後普通に取得できる能力のある人は、誰でもドラムが叩ける

 と思います。ちなみに私は、現在ツアー等でマニュアル車を運転させてもらえません。操作が未熟で危なくて仕方ないそうで(笑)。

譜面が読めなくて…

 という生徒さんもいらっしゃいます。
 正直、譜面が読めなくてもどうにかなる現場もあるし、譜面が読めないまま世界的なドラマーになってしまった人もいます。

 しかし個人的には、やはり譜面を読み書きできる事のメリットの方が多く感じます

 そのメリットとは、

 ・フィルインがきれいに拍に収まる→ドラムを始めて皆がつまずく第一関門クリア。
 ・手と足と、どこが連動しどこが別々に入るのか、目で見て理解できる→複雑なパターンも習得しやすい。
 ・自分の苦手な事が一瞬でわかり、修正ポイントも絞りやすい→上達が早い。
 ・憧れのドラマーの演奏を譜面に書けるようになる→正確にコピーができる。

 他にもたくさんありますが、難しく複雑な事をやりたい場合は特に、譜面の読み書きができれば本当に効率が良いです。


譜面が苦手という方は経験上、原因は単なる苦手意識である事が多いです。しかし、ドラムにまず必要な譜面の知識は、実は少しの量だけで構いません。

 全音符・2分音符・4分音符・8分音符・16分音符…5種類
 それぞれの付点(1.5倍の長さ)…5種類
 それぞれの休符、それぞれの付点の休符…10種類
 3連符、3連の休符…2種類

 たまに32分音符も出てきますが、これら計22種類の音の長さが把握できれば、たいていのドラムの譜面は読み書きできます。22種類とはアルファベットよりも少なく、しかもそれぞれの関係が2倍・3倍・4倍と大変わかりやすい。

 実際にスタジオに来ていただければ、講師自らそれぞれの音符を実演します。よりわかりやすく音符の長さの関係を把握できる事でしょう。譜面の読み書きのレッスンに絞れば、おそらく3回、計3時間で全てご理解いただけるであろうほど、習得すべき分量は少ないです。

 是非譜面を読み書きできるようになって、より充実したドラムの領域へ足を踏み入れていただきたく思います!

 



使用テキストは?

ありません。
なぜなら、初心者の方からヴェテランの方まで全てが受講対象であるため、同一テキストを使用すると大変効率が悪いからです。

初回レッスンの際に、まず経験年数をお聞きし、ドラム経験のある方は少し演奏して頂きます。
その後、今後どのようなプレーヤーになりたいかをインタビューし、長期的に見て必要な技術を提供していく、という方法をとっています。

楽器の習得で一番効率が良いのは「苦手な事だけ練習する」事です。当レッスンでは、今何の技術が一番足りないかをその場で見つけ出し、その為の最も効率の良い練習方法を提供していきます。

その際、出来ればノートをお持ち頂き、練習パターン等を橋本が記入していきます。それが、その生徒さんにとっての「テキスト」になります。

2013年2月12日火曜日

Alpine Style とは?


 Alpine Style(アルパイン・スタイル)とは、登山家の登山スタイルを指す言葉です。

…アルパイン・スタイル(Alpine-Style, アルプス風登山)とはヒマラヤの様な超高所や大岩壁をヨーロッパ・アルプスと同じ様な扱いで登ることを指す登山スタイル・用語。大規模で組織立ったチームを編成して行う極地法とは異なり、ベースキャンプを出たあとは一気に登り、下界との接触は避ける。また、サポートチームから支援を受ける事もないし、あらかじめ 設営されたキャンプ、固定ロープ、酸素ボンベ等も使わない、登る人の力にのみ頼ることを最重要視して行う登山スタイルである。(wikipedia)…

 登山は雪崩・落石・天候悪化などの危険が伴い、命に関わる全ての決断を下す決断力と、自然に対する鋭敏な感覚や知識がないと生きては帰れません。アルパイン・スタイルの場合、チームで分担しないので基本的に一人で全て完結できる実力が必要となります。

 アルパイン・スタイルで有名な登山家、ラインホルト・メスナーやヴォイテク・クルティカ、山野井泰史氏などは皆、ワールドクラスの実力と経歴を持っています。そういう姿勢だからこそだと思うのですが、皆誰よりも山を愛し純粋に向き合っているのが、彼らのインタビューや著書から伝わってきます。

 さて、音楽を演奏する時、自分はここ5~6年は特に「複数のアンサンブルの中でも、まず1人1人が自分の音色とタイミングを持つべき。そのほうが良いアンサンブルになる。」と考えてきました。チーム(バンド)のメンバーに頼らない。他人にばかり決断を委ねない。その場の空気に鋭敏になり行き先をしっかり見通し、時には道標を提示する。余計な事にとらわれず、今の音にまっすぐ向かう。

 この半年登山に夢中になるうちに、自分が目指してきたドラミングはアルパイン・スタイルそのものだという事に気づきました。レッスンというのは、自分が今まで追い求めてきたものを伝え、より楽しくやりがいのある世界へ行ってもらうのが目的なので、では講座のタイトルにしてしまおうと思い、Alpine Drumming Workshopと命名したわけです。

例えばこんな場合は?



  ドラムという楽器は、なかなか一人ではライブをできないので、少し叩けるようになるとバンドを組む事になりますね。バンドを組んで演奏する時、リズムがベースとずれてしまった。ドラマーのあなたはどうしますか?

  じゃあ、全部ベーシストに合わせればいいや、といって全部合わせたとします。ところが、もしあなたの隣のベーシストが実に怪しいリズムならばバンドはどうなるか…。

  バンド解散の危機を救うべく、あなたは立ち上がります。「自分が絶対揺れないテンポで叩けるようになるから、みんな自分に合わせてくれ!」

  あなたがバンドを引っ張り、バンドサウンドがうんと良くなったのを他のバンドが見ていて、あなたは別のバンドに呼ばれました。

  そのバンドは自分より良いリズムのメンバーばかり。自分が引っ張るのに疲れたあなたは楽ができると思い、ついていくだけにしました。みんなに合わせて叩いているだけでとても上手くなった気になりました。しかしある日、隣のベーシストが一言「お前のドラムだけ全然グルーヴしてない。メンバー全員がそれぞれ自分のグルーヴを持っていないとバンドもグルーヴしないの。そんなの全部バレちゃうからお客さんがあんまり盛り上がってないの、わからない?」…さて、あなたはこれからどうしましょう?

  どんなメンバーとでも、どんなシチュエーションでも、自分を信じて自分のタイミングで自分の出したい音色を出せるドラマーになる。最大の実力をもって音と純粋に向き合う。それが共演者にとってもオーディエンスにとっても一番プラスになります。
 
そのための楽器コントロール能力、心のコントロール能力を、Alpine Drumming Workshopでお伝えしていきたいと思います。